現在、わたしは自社サービスの開発に携わっています。
自身としても会社としても初の「スクラム開発」で進めています。ワクワクです。
今回は、私が業務でドラッカー風エクササイズを実施した体験談をお伝えします。
私の思いも乗っかってるので、ちょっと長文になってますがぜひ。。。
プロジェクトチームの構成
メンバは、以下の通りです。
- プロダクトオーナー:PO
- Aさん(CTO)
- 開発チーム:Dev
- Bさん(業界10年目の業務委託の方)
- Cくん(業界3年目の新卒)
- スクラムマスタ:SM
- サバ缶(業界6年目の私)
この4名で構成されています。
まだ立ち上げ期ということもあり、規模は小さいです。
チームが抱えていた課題
課題の発覚
ある日、開発メンバであるBさんが、Cくんに対してプルリクを送りました。
Cくんがいつものようにレビューし、指摘を返すと、
ちょっと高圧的な言葉にも捉えられるコメントが返ってきたようです。
その出来事を知ったのは、Cくんからの相談がきっかけでした。
それぞれの話を聞くことで気づいたこと
対立する2人の間に立つ者として、片方の人間にいい顔していると大抵上手く進まない。
これまでの経験からそう学んでいた私は、Cくんに肩入れし過ぎないよう
2人それぞれの考えを聞くことにしました。
するとBさんとしては全く悪気なく、単なる考え方の違いによるものであることがわかりました。
それに当たり前ですが、両者ともに間違ったことを言っていたわけではありません。
そこで気づいたのは、業界10年目のBさんが意図せず、
見えない圧力によってCくんの意見が抑圧されている構図になっていることです。
つまり、立場上、気を遣って言いたいことが言えないという状況が生まれていたのです。
本音で語れない息苦しさ
『心理的安全性』という言葉があります。
組織の中で自分の考えや気持ちを安心して発言できる状態のことです。
私は自社を「心理的安全性が高い組織だなぁ」と思っています。
しかし、新卒3年目のCくんにとっては、
まだBさんとの関係性も構築されておらず、発言しづらさがあったのです。
私の心理的安全性は、全ての人にとって共通認識ではありませんでした。
主観の心理的安全性は、単なる思い込みに過ぎない場合があります。
それに気付かされました。
誰しも気を遣う
こんな経験はないでしょうか。
今の自分の立場上、ここまで突っ込んだ質問をするのは気が引ける……😟
時間オーバーしてるけど、会社の取締役だしちょっと話を止めるのは……🤔
相手のことを気遣って、本音が言えない場面、数多くあると思います。
しかしこれでは、互いの持つ不安や悩みを共有できず、後になってから大きな問題へと繋がってしまいます。
立場上、気を遣って本音が言えない
→認識齟齬が起きる
→価値観の違いによって、意図せず衝突が起きる
この課題をどうにか解消したい。
そう思って書籍やサイトを探索していたところ、とあるワークを見つけました。
それが『ドラッカー風エクササイズ』です。
ドラッカー風エクササイズとは
ドラッカー風エクササイズとは、メンバーのスキルや得意領域を明確にし、チーム全体が持つ能力を把握するためのワークショップのことです。
互いのことを知るために、価値観などを共有したりします。
これによって、チームで出来ること・出来ないことを明確にすることで、どんなスキルを持った人が必要か採用やメンバアサインにも役立てることができます。
一般的には、プロジェクト立ち上げ時やメンバーの入れ替わりが起きたタイミングで実施します。
実施手順
ドラッカー風エクササイズの手順は以下の通りです。
質問内容
調べるとすぐに出てくるテンプレートの質問があります。
- 自分は何が得意なのか?
- どういうふうに仕事するのか?
- 自分が大切に思う価値は何か?
- チームメンバは自分にどんな成果を期待していると思うか?
今回、私たちのチームオリジナルの質問を作成しました。
今回の目的は、メンバーそれぞれの価値観や期待していることの認識を揃えることです。
なので、❶〜❹は自分の内面を開示する質問、❺は他者に対して思いを伝える質問として用意しました。
そして❹は主観でOKとしました。
❺のメンバからの回答を見て、自分に対する思いを知って、思い込みをなくす施策として、このような質問を用意しました。
マネジメントを体系立てて確立させた「ピーター・ドラッカー」という人物から取られています。
彼はマネジメントの父とも呼ばれる著名人で、「我々の使命とは何か」「我々の顧客の価値とは何か」という『〜は何か』のような問いかけで有名です。
上記の質問をご覧いただくと分かるとおり「〜は何か」の形式になっていますね。
実施計画
以下のように進めました。
実施1週間前
概要・目的・背景 の3点をメンバーに伝えます。
そして、Googleフォームで事前に回答するようお願いしておきます。
カンペとして使用してもらい、当日は記入してもらうだけの状態にすることで、ディスカッションに多く時間を割くことができるためです。
実施当日
進め方は以下の通りです。
- ❶〜❺までの回答を付箋に記入してもらう
- ❶〜❹までの付箋をホワイトボードに貼り出してもらう
- 一人ずつ発表していき、気になる点などがあれば質問して、より深く相手のことを共有してもらう
- 一巡したら❺の付箋を、それぞれのメンバ領域に貼っていく
- 一人ずつ、自分以外のメンバに対して思いを発表してもらう
- 最後に実施ごとのアンケートを配布する(今回はGoogleフォーム)
実施にあたって気をつけたポイント
気をつけたポイントは、3つあります。
実施後の変化
定性的変化
実施中から変化していたのですが、お互い質問を投げかけ合って、
価値観の共有をしようとする雰囲気が自然と生まれていました👍
そして立場上言いづらいということも減り、サービスを通してその先にいるユーザのことを思って発言できるようになったと思います。
新卒のCくんが、CTOであるAさんに対して意見を述べたり、
私に対しても色んな提案をしてくれるようにもなりました。
チームにとって良い相乗効果が生まれたと思います。
定量的変化
実施前との比較ではありませんが、実施後にアンケートを取りました。
そこで「メンバに対する理解を深めることができましたか」という質問に対して、5段階評価の5をつけるメンバがいました。
口頭でも「あのワーク、やって良かった」と言ってもらえたりしたので、チーム内でも好評でした。
そして大きな変化として、もう一つあります。
相談当初のCくんは「Bさんのプルリクをレビューするのは精神的に苦しい」とまで溢していました。
暫定対応として私が代わりにレビューしていたのですが、ドラッカー風エクササイズ実施後は、私へのネガティブな相談が無くなりました。現在ではBさんとCくんでレビューを円滑に回すことが出来ています。
僕の考え
人は分からないから不安を抱くんだよ。
言い換えると、分かれば不安は無くなるんだよ。
これは私が新卒3年目の頃に、大好きな上司から教わった言葉です。
その「不安」に振り回されて、多くの苦労を経験しました。
今でももちろん不安いっぱいです。
ですが、不安との付き合い方が変化しました。
未来という時間に対して、初めての仕事に対して、そして人に対して。
さまざまな「分からないもの」に対して「不安」を抱くのが人間です。
リモートワークが当たり前になった現在、以前よりも一緒に働くメンバーと疎遠になっています。
自然と業務に関することしか連絡しないようになり、雑談は無駄な時間と判断され、効率ばかりが求められるようになり、いつしか「人を知る」ということが煩わしい作業と成っていきます。
ただ、私はこう思うのです。
合理的になるほど社会性が失われる。
非合理になるほど社会性が養われる。
業務を仕組み化して、自動化して……
無駄なことは出来るだけ除外して……
もちろん仕事は効率化していくでしょう。
でもそれは、本当に仕事が楽しめる環境と言えるでしょうか?
相手のことを知らない上に、表情や態度といった情報がほとんど入らない環境だと、自分の思い込みで傷ついてしまったり、傷つけてしまうこともあります。
😠 < なんでこんな細かいところまで指摘してくるかなぁ……Jさん、めんどくさっ!
そう思うこともあるでしょう。
でももし、指摘してくれた相手が過去に大失敗を経験して、その実体験に基づいて指摘をしてくれているのだとしたら……?
すごく勿体なくないですか。
その本質的な部分を理解せずに、表面的な行動にのみ着目したことによって
小さな思い込みが、徐々に大きな溝を生み出していきます。
今回のワークを通してメンバ間の関係性が改善されたのは、相手の中身を理解している(ホワイトボックスになっている)からだと思います。
Jさんはこういう価値観だったな。
だからこういう行動(言動)なんだな。
別に攻撃したくて言ってるわけじゃないしここを修正して……
と捉え方も大きく異なります。
今回のワークはこれが上手くいった点だと思います。
業務改善において、仕組み化など手段は多くありますが、まずは一緒に働いているメンバーのことを互いに理解し合うことから始まるのではないかと思います。